クラニオセイクラルセラピーの起源

クラニオセイクラルセラピーは1900年初頭にアメリカンオステオパシーに在籍していたウィリアム・ガーナー・サザーランド博士の洞察的な探究によって見出されました。

彼が研究生であった頃、頭蓋の骨を手にとって観察していた時、稲妻のような閃きが起こったと後に述べたそうです。当時の一般的医学の考えでは頭蓋縫合は幼児から成人に成長するに従って融合され、動きに柔軟性がなくなると教えられていました。しかし、彼の閃きはこうでした。

彼は、斜角形状にある蝶形骨と側頭骨の縫合のあり方を見て、それらがまるで魚のえらのように呼吸運動をするためにデザインされているようだと考えたのです。この閃きから調査を行った結果、事実、それらは呼吸をするように動くだけではなく、生理的影響を及ぼしていることを知るにいたりました。今日ではハイパーマイクロスコープなどの調査により、頭蓋縫合の間には活気ある細胞組織で満たされ、柔軟な動きが可能であると実証されています。

その後もサザーランドは鋭い観察と鋭敏な触診による調査を続け、人体の生存システムの驚くべき発見をしました。この呼吸のような運動は筋肉の収縮や液循環、また、その他の体の機能による不随意な動きではなく、むしろ、それらの動きをも推進する “何か” の力によるものであり、それを体の外からやってくるインテリジェンスと位置づけたのです。彼はそれをブレスオブライフ Breath of Life と呼び、普遍なる壮大な力の作用と考えました。ブレスオブライフという用語は、聖書の「神は泥で作った人形に息を吹きかけて命を与えた」からきているそうです。

クラニオセイクラルセラピーの基本コンセプト

原初呼吸メカニズムとその5つの様相



クラニオセイクラル バイオダイナミックスはブレスオブライフの概念が基盤となります。それは、生命を維持する力強い推進力と、生命そのものの健康についてです。原初呼吸とは酸素を取り入れる肺呼吸のことではなく、生命の根源的な要素であるプラナを取り入れる呼吸とされます。

サザーランドは中枢神経系周辺を循環する液の潮流のような動きを発見し、この液がプラナを取り入れる最初の媒体と考えたのです。この潮流のような動きとは、実際の脳脊髄液の流れを指しているのではありません。細胞の液質を媒体とし、タイドモーションと呼ばれる潮の満ち引きのような動きが感じられることを私たちに示したのです。さらには、細胞群である組織(脳系、骨系、膜系、筋系など)は、そのひとつひとつのパーツが呼吸しているかのように律動的な膨張と狭まり、そして回転するような動きを感じることができます。これらの動きは、組織ワールドの均衡が保たれた張力モーションとして知覚することができます。

原初呼吸メカニズム/Primary Respiration Mechanism



クラニウムとは頭蓋のことであり、セイクラルは仙骨のことです。クラニオセイクラルシステムとは中枢神経系とそのまわりを循環する液、そして、それを取り囲む髄膜系と頭蓋仙骨系の全てを含みます。呼吸のように運動するこのシステムをサザーランドは原初呼吸メカニズムと呼びました。私たちプラクティショナーは細胞質に現れる原初呼吸に注目し、人体系のもっとも深遠なる生理システムへのアプローチを試みます。

原初呼吸メカニズムの5つの様相



以下に示す原初呼吸メカニズムの5つの様相は、Dr.サザーランドによって定義され、クラニアル コンセプトの規準となりました。それらは互いに連携しあい、統一されたユニットとして機能します。

1.脳脊髄液の固有の波動
2.脳と脊髄の固有のモティリティ(能動性)
3.相互張力ー膜モーション
4.頭蓋骨の骨間モビリティ(可動性)
5.骨盤の腸骨間にある仙骨の不随意モーション